音楽の編み物

シューチョのブログ

ひとりぼっちの宇宙人 (22)

第 II 章 ダン=セブンという多面体

5 悲劇の宇宙人/宇宙怪獣

  第6話「ダーク・ゾーン」(1)

 本稿で,「ペガッサ星人」とは,ペガッサ市内にいるだろうペガッサ星人の集団/総体ではなく,地球に飛来した単体=ダーク・ゾーンの主を指すものとする。集団/総体としては「ペガッサ」という呼称を用いることにする。

───

地球は狙われている。今,宇宙に漂う幾千もの星から,恐ろしい侵略の魔の手が…

───(金城 DVD[99a:1])

 第1話「姿なき挑戦者」冒頭のこのナレーションは,『セブン』の物語世界のキーとなるはずであった。しかし,第6話にして,早くも《侵略しない宇宙人》が登場する。ペガッサの知性・理性は,「我々の想像もできんような科学を持っている」(金城 DVD[99b:6])というマナベ参謀の台詞に象徴されるように,人類よりも圧倒的に優位である。が,ペガッサは,人類に対し,その科学力を攻撃的に見せつけて強行に及ぶなどということはついにない。怪我に苦しみ,初対面の地球人であるダンとアンヌを前にしてしばらく黙ったまま怯え続ける,臆病で恐がりなペガッサ星人。本来の姿を見せず,彼がその身を隠す黒い影=ダーク・ゾーンは,彼の小心の象徴であろう。その彼もアンヌの部屋でダンとアンヌにケガの手当ともてなしを受け、次第に心をひらき、雑談を交わすようになる。その話では、科学への信頼と懐疑の両方がさらりと述べられていてなかなか興味深い(後で触れる)。しかし、まだ自分がペガッサの使者であることは隠している。

 さて、ペガッサ市は、動力系統に重大な故障を来し、このままでは地球に衝突するからと言って、「地球に軌道変更を要請」してくる。人類の側からすれば、何を言っているんだ、そんなことできるわけないじゃないか、「ちきしょう、ふざけやがって」(フルハシの台詞─前掲DVD)となるが、ペガッサからすれば「何をあわてているんだ、彼らの言う通り、しばらく地球の軌道を変えてやればいい。ただ、それだけのことじゃないか」(ペガッサ星人の台詞─前掲DVD)となる。

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ダン「バカを言え。地球の軌道をどうして(=どうやって)変えるんだ」

ペガッサ星人「何だって。おい、地球は自分で動けないのか。勝手に動いているものに、人間は乗っかっているだけなのか。それだったら、野蛮な宇宙のほとんどの星と同じじゃないか」

───(前掲DVD ( )内は筆者注)

 この緊急事態を受け、地球防衛軍のマナベ参謀は「やっぱりペガッサ市を破壊する以外に地球を防衛する方法はない」と考え、ペガッサ市の爆破を決断する。