音楽の編み物

シューチョのブログ

音楽テーゼ集

三つの G は涙の粒である。その雫が Es のフェルマータである。

音楽テーゼ集 (10) 三つの G は涙の粒である。その雫が Es のフェルマータである。 ─── 交響曲第5番ハ短調作品67(“運命”) ベートーヴェン自身が第1楽章冒頭動機について「運命はこのように扉を叩く」と言ったとか言わないとか。「実話かどうかに拘らず…

「エロイカ」葬送行進曲158小節の変イ音は,魂の発音=「冥音」である。

音楽テーゼ集 (9)「エロイカ」葬送行進曲158小節の変イ音は,魂の発音=「冥音」である。 ─── 交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」 第1楽章:序奏が置かれず、提示部が驚きを伴って突然開始、短い動機が次々と現れ、運動的で細かい音符が周到に縦横に編み…

ベートーヴェン最初の交響曲は、歌って遊ぶ大きな小品である。

音楽テーゼ集 (7) ベートーヴェン最初の交響曲は、歌って遊ぶ大きな小品である。 ─── ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調作品21 斎藤秀雄はその著書『指揮法教程』において、この曲の第2楽章を課題曲としている。しばらくこの曲と向き合い、なるほど、さ…

ベートーヴェンの小交響曲は、小さな大交響曲であり、思索する情熱である。

音楽テーゼ集 (8) ベートーヴェンの小交響曲は、小さな大交響曲であり、思索する情熱である。 ─── ベートーヴェン:交響曲第8番へ長調 第7と第8の2つの交響曲はほぼ並行して作曲され、作曲者自身は第8の方が気に入っていたと伝えられる。“リズムの神化”…

メンデルスゾーンの管弦楽は、言葉の無い歌である。

音楽テーゼ集 (6) メンデルスゾーンの管弦楽は、言葉の無い歌である。 ─── メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」作品26 メンデルスゾーンの交響曲・管弦楽曲の特徴とは、歌謡主題の美しい旋律を交えつつ、純器楽的な動機が織りなす“音のドラマ”が繰り…

編曲とは、原曲とは別の特殊解へ至らんとする道である。

音楽テーゼ集 (5)一つの音楽作品を編曲の対象としてみるとき、それには、微分方程式の一般解に相当するような、“原曲以前”の原初的側面がある。 原曲とは、その微分方程式の特殊解の一つである。 編曲とは、原曲とは別の特殊解へ至らんとする道である。 ────…

音楽作品は、量子的に振る舞う多様体である。

音楽テーゼ集 (4) 音楽作品は、量子的に振る舞う多様体である。 演奏表現とは、音楽作品がそれによって初めて一つの姿に象られて現れ出るような、一つの行為・形態である。音楽作品は、別の演奏表現によっては別の姿に象られて現れる。互いにときに著しく相…

音符とは言葉である。

音楽テーゼ集 (3) 音符とは言葉である。(テーゼのみ)

楽譜とはテクストである。

音楽テーゼ集 (2) 楽譜とはテクストである。 文章(文学作品、評論、他あらゆる類の文章)とは、書き言葉、書かれた言語である。その典型的な存在の仕方の一つは、白紙に活字を並べて綴じた「テクスト=書物(本)」という存在の仕方である。もっとも、活字…

音楽とは抽象である。

音楽テーゼ集 (1) 音楽とは抽象である。 例えば「エロイカ」の第2楽章について、「行進曲なのだから歩けないような遅いテンポは間違い」であるとして、フルトヴェングラーなど旧時代の巨匠たちの演奏を批判する論をしばしば耳にする。しかし音楽を演奏する…

音楽テーゼ集

新カテゴリー「音楽テーゼ集」を開始しました。 一つの文(主として英語構文でいう第2文型の文)=テーゼを冒頭に掲げ、それについて後に説明を加える、というスタイルで書くことを原則としているので「テーゼ集」と称しています。 旧ブログで公開していた「…