音楽の編み物

シューチョのブログ

ひとりぼっちの宇宙人(19)

第 II 章 ダン=セブンという多面体

2 セブンであることを知られるダン

  第5話「消された時間」

 これから1年にわたって放映する『セブン』の作品世界の雰囲気を紹介し方向付ける、いわば映像娯楽編といった感じの1本である。ユシマ博士役にゲスト俳優山本耕一を迎え、博士を乗せたチャーター機の着陸にミニチュアワークを駆使したカットなどの出来上がりの映像を見ても、絵コンテ作りの段階から入念に成されたであろうことが想像できる。が、ストーリーの展開には少々ほころびも見える。

 ユシマダイオードによるレーダー網の強化を計る地球防衛軍ウルトラ警備隊。しかし、それを知ったヴィラ星人が先回りしてマインドコントロール下に置いたユシマ博士を使ってレーダーを破壊させ、その間に地球に侵入する。ヴィラ星人はユシマに「注意する。地球には、人間に味方する宇宙人がいる。名前はモロボシダンという。この男に気をつけろ」(菅野 DVD[99b:5])と促す。ユシマは、ヴィラ星人が細工したダイオードの取り付けをダンに命じ、直後にレーダーの異変による混乱をダンの責任に帰そうとする。具体的にはダンがスパイであるかのようにほのめかすのだが、その場は何とかおさまる。

───

ダンのモノローグ「ユシマ博士から目を離してはいかん。彼は僕の秘密を知り罠に陥れようとしているのだ。何か企みがあるんだ。そうはさせんぞ。」

───(前掲DVD)

ダンは、フルハシに「気にするな」と声をかけられるが、ユシマが機械室にこもっていると聞き、機械室へ向かう。ユシマの命令で門番をしている防衛隊員に追い払われそうになるが、振り向いて透視し、ヴィラ星人に完全に操られている様子を目撃する。機械室から出てきたユシマに襲いかかり、ついには銃まで向けるダン。この行為が決定的となり、キリヤマはソガ・フルハシに命じ、ダンを独房に監禁する。

 これは少々拙い筋書きだ。ダンは「罠に陥れようとしている」と見抜いていながら、どうして自ら短絡的な行動に出てしまうのか。確かに、ダンの「若気の至り」という解釈も成り立つ。が、そういう「ダンのダン性」は、同じくこの挿話の前半の「(ユシマのことをアンヌに耳打ちして)29歳、博士号を5つも持ってるんだってさ」という台詞などに代表される、純朴な若者のイメージとして現れてこそふさわしい。ところが、ユシマの正体を自らの超能力で見破るダンは「セブン性」を帯びているのであって、緊急性があるとはいえ、もう少し慎重かつ着実でなければ不自然である。