ふたつの月の間には♫ カイマナふぁみりー ライブ
2023年11月18日土曜日、カイマナふぁみりー の生ライブが4年ぶりについに実現!
いやぁ、待ちました…そして待った甲斐がありました。あり過ぎ。たくさん聴けた曲の中からいくつか選んで書いてみました。毎度の野暮な長文ご容赦。カバー弾き語りソロや圧巻の「ダイナミック琉球」等への言及を割愛してもこの分量、書き過ぎの自覚大いに有り…。それでも、2018年12月に京都ライブの感想でも書いたことは、不変であり普遍的だと考えます↓。
──
一つの芸能芸術の内容は、それへのどんな解説感想よりもそれ自体の方が必ず繊細で豊かで、全貌はとても書ききれるはずもないこともまた事実です。
──
「横浜フォーク酒場マークII」はカイマナふぁみりーのいわばホームグラウンドのひとつ。カイマナふぁみりーライブの開始前には常連の方々?によるオープニングアクトで本格フォークの歌唱・演奏もありました(駆けつけ遅刻の私は終わり近くしか聴けず残念)。
観客は、Youtube配信のチャット交流で互いに親しい、それゆえ多くはおそらく初対面同士、すなわちカイマナふぁみりーとその音楽を愛するということのみで繋がった人たち。といっても私はチャットのリアルタイムのやりとりは苦手で、よく黙り気味のまま失礼することも多いんです…。そんな私でさえ、みなさんにお会いできあるいはお見かけできたそれだけで何だかすごく嬉しくなりました。隣に座れた(旧知の)いたりーの さんや席が近くの他の方とも「まさにディープなオフ会…」「いや?今がオンでしょ」と。
「ルシンダの宝物」(カイマナふぁみりー)
前奏が始まると、会場のマークIIがみるみる優しい熱気で満たされていくのがわかります。ここへの愛を度々語っていた海愛リオさんの気持ちが、今回初来訪の私にも何だかよくわかった気がしました。
「ルシンダの宝物」は、毎週のYoutube配信で通常ワンコーラス歌われるオープニング曲でもあります。カイマナふぁみりー全曲中でも珍しい、終始長調の作品。カバー曲でもほとんど短調を選ぶ彼らのレパートリーの中では実は異彩を放つといってよく、それを自らオープニングにプログラムするセンスが光ります。
タイキさんのギター独奏。その繊細な撥弦は、純アコースティックのクラシックギターの名手のそれと何ら変わるところがありません。彼の独奏は、配信での「故郷」「涙のトッカータ」等の名演に親しんではきましたが、そういえば生で聴くのは初めてだったことに途中で気づき、ぐっとこみ上げてくるものがありました。するとそのこちらの胸中に呼応するかのように、終結近くで、彼の左手が指板を滑って曲が二度の転調を畳み掛ける箇所に差し掛かり…もうすっかりやられてしまいました。これは参った…。一人の若者による一本のギターが奏でるほんものの、ほんとうの“器楽の声”に、震える感動を覚えました。今回の私にとっての白眉。
「私はピアノ」(桑田佳祐)
「この曲は、低い語りと盛り上がるサビのギャップが魅力ですね!」と(たぶん)リオさん自身も書かれています(下記Youtubeページ)。彼女の実演に接すると、特にすごかったのは歌い出しのピアニシモ!短編小説の朗読が始まったかのようなその言葉遣い/息遣いは、そばに近寄って来て語られるようで思わず耳を澄ませる…。それでいて台詞(無旋律)にはならず崩されもせずあくまで元の旋律が守られ歌─音楽として届く。その呟きのフレーズを聴いて、あぁ、そうか、この詞って、この曲って、こういう詞だったんだ、こういう曲だったんだ…と初めてそのほんとうの中身を聴いた気がして鳥肌が立ちました。その私には、下記動画の音声はそうした細やかさまでは十分に拾いきれていないようにも感じ…誰のせいでもない、録音というものの一面の本質…、まさに生ライブの空気感の伝播の賜物です。独自の旋律のスキャットも美しい…。全編まことなる音楽造形がそこにありました。
──シャレたオチの一言が添えられた曲紹介も含め、Youtubeで視聴できます。──
https://www.youtube.com/watch?v=xzAt3nZe7bk
それにしても、どの曲も、タイセイさんのギターの堂に入った弾きっぷりはどうでしょう!彼の発する音もアクションもまさにキレッキレ。常に全身に音楽の血流が脈打っていることが伝わってくる。興が乗るほど反り返るのでなく前傾していくそのスタイルを見て、フォルテの打点を上から大きくでなく下へ下へと屈んで振っていく往年の巨匠指揮者カール・ベームを僕は思い出しました(ぜんぜん関係ないけど(笑))。今やカイマナふぁみりー中最も背が高くてカッコいいギタリストに大成長したタイセイさん。…自分の背丈より大きいかのようなギターを抱え/ギターに抱えられ、そのネックを振り回して/ネックに振り回されて弾いていた頃の彼を知る一ファンとして、深い感慨を覚えずにいられません。終演後、彼からハイタッチを促されて応えたとき、嬉しかったなぁ…。
「ふたつの月」(Rio/海愛愛流)
「タイセイは…あれ?コードストローク…あっそうかここはリオのソロだった!」と思う一瞬が僕には未だによくあります(頭掻)。この曲の前奏後奏もその一つでした。─さらには、普段はベースラインのタイキさんがふとソロをとるときもあり、見逃せません─。
ボーカルのリオさんは、ギターも、両隣の弟二人に並ぶ、どころか姉としての一日の長も感じさせる一級の腕前。ともあれ、この1曲を聴くだけでも、彼らの音楽はどういうものかが、どんな魅力を持つのかが、十二分に伝わることでしょう。無二の歌詞世界としなやかな旋律美が沸騰するリズムの躍動の中に詰め込まれた、名曲の名演。帰路の新幹線、私の頭の中ではずっとこの曲がリフレインし続けていました。
──この日の演奏も先日Youtubeにアップされました。ぜひ!──
https://www.youtube.com/watch?v=gi9uCBmIPG0
カイマナふぁみりーのYoutubeページには、他にも続々と11/18ライブの演奏曲の動画がアップされつつあります。
「透明な夢」(Rio/海愛愛流)
Rio 作詞/海愛愛流 作曲編曲 による新作の一つ。4年前には聴き得なかった新たな曲がいくつも聴けるというのも「待った甲斐」の一つ。カイマナふぁみりーの無理のないしかし着実な歩みが嬉しい。
パパとリオの二重唱。熱唱に打たれました。以前、初めて京都ライブを見たとき、演奏中、前で歌い弾くリオさんたちにパパが後ろから指揮するような身振りを送っていたことを思い出します。「あぁ、この人は仲間だ」と(勝手ながら思い)泣き笑いの嬉しい気持ちがこみ上げたものです。指揮者として同類、もそうですが、リオさんらには見えないけれども「後ろから」振っている、そこに何だかとても共感できたのです。パパの演奏/歌唱の姿にはどこか遠慮の雰囲気が漂っているとずっと感じてきました。有り体に言っても、パパはこのバンドの総合プロデューサーであり精神的支柱であり、彼あってのカイマナふぁみりーといえ、もっと押し出しの強いキャラで通してもよさそうなのに、普段は前面にあまり出ず、後ろから見守っている。そして、パパ自身がリードボーカルもとる曲目になってやっと、ふと、隠しきれない情熱・情感が咳き込むように溢れ出てくるのです。そんなパパの熱量を今回私が最も感じたのがこの「透明な夢」でした。今こうして書きながらも目が潤みます。「後ろのパパ」も素敵で魅力的なのはもちろん、「溢れる瞬間」の方もさらに増えれば嬉しいです。
海愛愛流さんへ、心からの敬愛を。
パパと、念願のツーショット
打ち上げ会での姉弟デュオ
ジャケ買い狙い?のタイセイ氏😃