音楽の編み物

シューチョのブログ

ひとりぼっちの宇宙人(20)

第 II 章 ダン=セブンという多面体

4 地球人とダン=セブンを“見下ろす”宇宙人

  第8話「狙われた街」(1)

 北川町の住民が次々と事件を起こす。乗客に襲いかかるタクシー運転手、自分で旅客機を墜落させてしまうパイロット(=アンヌの叔父)、ライフルを乱射する青年…。「また、北川町だ」と気づいたダンはライフル青年の話を聞きに彼を取調中の警察へ。ダンは、その帰りに無人のダンプカーに追われ、少しのカーチェイスの後、正体不明の声が空から忠告を受ける。

───

「モロボシダン、いや、ウルトラセブン。我々の邪魔をするな。これは命令だ。今すぐに手を引け。我々にとって、君を倒すことは問題ではない。だが、同じ宇宙人同士で傷つけ合うのは愚かなことだ。もう一度忠告しておく。北川町に近づくな、ウルトラセブン!」

───(金城 DVD[99b:8])

 「宇宙人同士」というキーワードがここで登場した。メトロン星人は、明確に地球侵略の意志を持ちながら、しかしダン=セブンとの闘いは回避しようとするのである。ダン=セブンに対し「宇宙人同士で敵対するのはやめようではないか」というポーズをとり、「おまえも所詮人類ではないのだから要らぬ介入をするな」と牽制するのである。しかしダン=セブンがその忠告を聞き入れないまま行動を続けると、今度はダンを自ら、さびれたアパート(実は秘密基地)へと誘導する。「ようこそ、ウルトラセブン。われわれは君の来るのを待っていたのだ。歓迎するぞ。何ならアンヌ隊員も呼んだらどうだね」(前掲DVD)──メトロン星人のダンへの第一声である。ダンとメトロンはちゃぶ台を挟んで向き合う。

───

「君たちの計画はすべて暴露された。おとなしく降伏しろ!」

「ハッハッハ…、われわれの実験は十分成功したのさ」

「実験!?」

「赤い結晶体が、人類の頭脳を狂わせるのに十分効力のあることがわかったのだ。──教えてやろう。われわれは人類が互いにルールを守り、信頼し合って生きていることに目をつけたのだ。地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間同士の信頼感を無くすればいい。人間たちは互いに敵視し、傷つけ合い、やがて自滅していく……どうだ、いい考えだろう」

「そうはさせん!地球にはウルトラ警備隊がいるんだ」

───(前掲DVD)

力んで銃を構えつつメトロンを見上げるダンと、高い座高でダンを見下ろし、まるで子どもを諭すような余裕の表情で応じるメトロンとの対比。極彩色の宇宙人が畳敷きの小部屋で口から光を放ってしゃべるという場違い・落差の演出。しかし、少人数の団欒の象徴であるちゃぶ台を囲むというTPOにおいて、「まあ、話を聞いていけよ」とフレンドリーに語るメトロンよりも、銃を片手にまじめな表情で睨み返すダンの方が、実は何と場違いで滑稽なことか。BGMもモーツァルトのフルート四重奏のような爽やかな音楽(→注)でメトロンの余裕ぶりを後押しする。この直後、メトロンは打って変わって素早い動きで襖を開け、ビルトインされていた宇宙船に乗り移る。

───

ウルトラ警備隊?恐いのはウルトラセブン、君だけだ。だから君には宇宙へ帰ってもらう。邪魔だからな。ハッハッハ……」

───(前掲DVD)

メトロンを追って(思わずつられて?)宇宙船に乗り込むダン。メトロンがダンを基地へ誘導したのは、基地から発射するロケットごとダン=セブンを宇宙へ追放するためだったのだ。

─この項つづく─

注:すべて冬木透作曲によるオリジナルBGM。