音楽の編み物

シューチョのブログ

言の葉と音の符 楽の譜は文の森 (55)

 NHKネットラジオ「らじるらじる」で大阪でもNHK-FMが聴けることを昨日まで知りませんでした。どうやら5月下旬から聴けるようになっていたそうですね。「2013年末まで試行」って,それ以降は止める可能性もあるのでしょうか。「本格運用の前」という意味だと信じます。どうか続けてほしいものです。

 現在の住処では,山の中腹に住んでいた昔のような受信状態は到底望めないため,FMを聴くことがとんと少なくなっていたのですが,ネットストリーミングの音質は,少なくともチューナーによる受信音質に比べればずっと良く,昨日はつい,ライプツィヒゲヴァントハウス管弦楽団ブラームス第2を第1楽章の途中から最後までずっと聞き入ってしまいました。指揮者はシャイーでしたし(笑),別に演奏そのものに興味があったわけではなく,実際特にこれといった聴き所もなかったのですが,FMをエアチェックしたカセットテープの山を作っていた中学高校の時期を懐かしく思い出し,当時の体験の現代版といった感じの気分が持続したのでした。

 ということで今日は,その「エアチェック」をしてみようかと。ストリーミングだからダウンロードというわけには当然いきませんで,USBヘッドフォンアンプからmp3レコーダーへとミニジャック同士でLineでつなぎリアルタイムアナログ録音を実行しました。それをMacに移し,今,iTunesで再生しています。シナイスキー&ケルン放送交響楽団の「悲愴」。これまた,演奏はこれといってどうということはなさそうですが,何となくたのしい。録音すること自体も,他に手軽で直接的な方法もありそうですが,これまた昔っぽくて何となくたのしい。ただし,再生時の,曲の途中へのアクセスは昔と比べ劇的な進歩(笑)であり,嬉しい限りです。

 その昔,カール・ベーム&ウィーンpo.の「ジュピター」,ブラームス第2,オトマール・スウィトナーベルリン国立歌劇場o.のブラームス第1,ドヴォルザーク第8,ヤーノシュ・フェレンチーク&ハンガリー国立so.のブラームス第4,コダーイ「ハーリ・ヤーノシュ」間奏曲,トレヴァー・ピノック&イングリッシュコンソートのバッハBWV1052ほかハープシコード協奏曲集,オッコ・カム&ヘルシンキpo.のシベリウス第2,第5…などは,みな,これらのFM放送によって初めて聴いた曲で,かつそれらのエアチェックによって聞き込んでいった曲です。まだ「同曲異演の森」に分け入る前の,曲を知るたのしみだけを追っていた時期。毎週土曜夕刊の中央頁の紙面に載る「FMウィークリー」で番組内容をチェックするのがたのしみでした。

上記の中で特に聞き込んだのはスウィトナーの来日公演2曲でしょうか。ベルリン国立歌劇場o.の,おとなしくない,ライブ感たっぷりの音(響き)にも惹かれていました。

ベーム&ウィーンpo.のこのジュピターは,フィナーレのコーダの主題でホルンよりもチェロの方がものすごい音で押し寄せ,当時スコアも持ち合わせていなかった僕は,ここにホルンが重なっていることを知らず,ずっとここを「チェロの所」と思っていました。おそらく普通の(未熟な)認識とは逆転した(未熟な)認識なのではないかと。

フェレンチークのブラームス第4は,第1楽章冒頭こそ「クリューガーのメヌエット(あるいは「ポーラ名作劇場」?)みたい」と当時の小中学生なら誰でも思うだろう感想を抱いて聴き進みましたが,その流れを突如断ち切るように第2主題冒頭(導入)の3連符を伴う独特の動機が現れたときは衝撃でした。今でもそのときの聴感・感覚を憶えています。いやあ,あのときはほんとにビビッと来るものがありましたねぇ。

カムのこの来日公演のシベリウスは後年CDにもなりましたね。当時,FM大阪でも週1回はゴールデンタイムにクラシックが流れるのがあたりまえ,それをこちらもあたりまえのように聴いていましたねぇ…。カムがインタビューでシベリウス第5について語り,締めに「…それに,やはり何といっても終わりがよい(笑)」と楽しそうに答えていた(訳されていた)のをよく憶えています。

ピノックのバッハだけはスタジオ録音。早朝の「バロック音楽のたのしみ」で,確か発売されてまもない音源から毎日次々と流す贅沢な企画で,寝る前にタイマー予約が大丈夫か何度も確かめ,けっきょくそれが気になって目が覚めて,リアルタイムにも聴いたりしていました。