音楽の編み物

シューチョのブログ

クリ拾い(42)

「テイクファイブ〜俺たちは愛を盗めるか」が終わりました。どこをとっても,稀なるほんもののエンターテインメントでしたね。

「相棒」の櫻井武晴の原案・脚本について。

 ここ数年,刑事物・ハードボイルド物の中には,耳を覆いたくなるような汚い言葉ばかりを連ねる脚本に辟易することも少なくありませんでした。「遺留捜査」はまだましなのでしょうがそれでもせっかくの上川隆也起用がもったいないといえる程度には汚かったし(特に第1作),特に「ストロベリーナイト」はひどかった(見かけた回だけだったかどうか知りませんが…)。話の中身以前に視る気をなくします。いえ,内容とはその表現と一体なのであり,汚い言葉が続く脚本では高品質のドラマになりようがないでしょう,とひとまず言い切っておきます。

 「テイクファイブ」ではそういうことが一切なく,品とユーモアが備わっていました。「盗みは人を不幸にする…」と始まるオープニングから,各回の台詞まで,安いリアリティーにとらわれずに「選んだ言葉を以て物語る」ことに徹していました。よけいな「ハラハラドキドキ」もなく,驚かせるためだけの無意味な「予測を裏切る展開」もなく,ただ,作品世界そのものが伝わってくる。よく「先が読めてしまう」ことをマイナスにのみ捉えるような皮相な感想をみかけますが,「予測が当たろうが外れようがおもしろいものはおもしろい」と思える作品がほんとうにおもしろい作品です。作品世界内で必然的に「フィクションの自己活性化」が成されていれば,視る側が先を読み切れていようが読み違って意外に感じようが,いずれであっても納得が行き,深く味わえるわけです。これこそ望ましいフィクションの形です。

 一つだけ違和感が拭えなかったのは,最終2話の中で帆村(唐沢)(のモノローグなど)が笹原(松雪)のことを「瑠衣」と下の名前で呼ぶところで,僕は少し唐突に感じました。「笹原瑠衣」で通した方が自然だったのでは。

俳優・配役について。

 主役の唐沢寿明はもちろん,松雪泰子,六角精児,でんでん,その他の面々も(意外なところでは峰竜太も)すべて,「この役にはこの人」および「この人にはこの役」という両方の意味合いにおいてピタリと決まった,みごとなものでした。稲垣吾郎も期待通り。以前から彼のファンでしたが,改めて「SMAPは稲垣」と思いました。

主題曲ももちろん○。そこからジャズバーに集まる5人組の泥棒を発想したのも○。JUJUが挿入歌として歌うということも○。ほんとによくできていてニクイ。ただし,オープニングタイトルのアレンジが5拍子でないのは△(笑)。