音楽の編み物

シューチョのブログ

クリ拾い (34)

ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦ベリアル銀河帝国

──以下、記事の性格上、上記映画の「ネタばれ」を含みますのでご了承下さい。──

 予想外なことに、なかなかおもしろかったのでした。少なくとも前作よりはいいと思います。

それにしても、3体の昭和の非ウルトラヒーローのオマージュヒーローを登場させるというプロット、よく通ったなあ。前作では、光の国の話にアスカ─ダイナの登場するという半端な面が否めず、その批判を受けてのことでしょう。確かに、昭和ヒーローの復活/合流という本作の方が筋が通りやすい。ミラーナイト、グレンファイヤーはオリジナルキャラクターの「正常進化/未来形」として十分に納得できる秀逸なデザインだったと思います。特にミラーナイトの意匠は映画版のミラーマンよりもずーっとよい。また、スーツアクターの体型もちゃんと考慮されているのがわかります。ジャンボットだけは姿の上でジャンボーグAからは遠いながらも、それゆえなのか、今回の3体の中で最も重要な役回りを与えられています。「叫べ、ナオ、ジャン・ファイト!」には思わず嬉しく、笑いつつも、何だかグッともきました。ナオが子どもなのもいいですね。このジャンボット室内での彼の「連動」アクションシーンのとき、一瞬館内の子どもたちに笑いが起きたように聞こえました。「まるで Wii みたい」と思ったのでは(ナオの場合、ナオキと違って“コードレス”でしたし)。一切 Wii をやらない僕でさえそう思ったほどですから。しかしもちろん、それは時間的前後関係が逆なのであり、当時のナオキのシーンは特撮シーンとの連動が表現しきれてはいなかったにせよ、円谷特撮ヒーロー作品は、Wii 的ヴァーチャル世界のアイデアを30年以上も前に実写映像として実現させていたのだなあ、と。

この辺り、監督・脚本のアベ・ユーイチ氏が僕と同世代であることは大きいのでしょう。たぶん、オイシイと思える所が重なっているし、つっこみ(つっこまれ)所を心得ている。でも「同世代だから趣向が合う」というだけではなくて、確かに、“子ども向けド派手エンターテインメント”の枠を守る中にいろいろ散りばめるという手法そのものが成功している、という点を評価したいのです。

他にも、いろいろと過去作品から“とってきた”シーンや台詞が盛り込まれていて、楽しめました。が、合点がいかないシーンもありました。グレンファイヤーが引き連れてきた、炎の海賊・鏡の星・エスメラルダの「人間」の仲間たちから光の砂?が立ち上って、ゼロを甦生させノアと一体化?しバラージの盾を具象化させることに成功する、という一連の流れについて。これは明らかに『ティガ』の「思いが光になる」の再来でしょう。これについてはすでに書きました。今回の映画のような「現実を著しく離れた」異世界ファンタジーなら、“何でもあり”度もうんと増しているはずで、気にならないかと思いきや、今回もやはり同様の違和感が僕には拭いきれず残りました。

なぜでしょうか。例えば、炎の海賊艦隊からは炎の、エスメラルダ艦隊からはエメラル鉱石の、鏡の星からは「ミラー何とか(笑)」の、それぞれの独自のエネルギーを全艦から波動砲みたいに発射させてゼロのカラータイマーに集約させて…、とか、そういう展開なら、まだ納得が行きます。つまり、「思いが光になる」ということは、まさにそのことをそのフィクション世界内で具象化してこそ、表現されたことになるでしょう。それを「光の砂の筋をCGで作って『思いが光になる』ことを表しました」では、抽象的過ぎて、表現にならないのではないかと。それとも、ウルトラマンのパワーというのは「思い」「気持ち」があってこそのものだ、としたいのでしょうか。ここら辺りがどうも僕としては煩瑣なのです。

書いてしまうと分量的にプラスマイナスが拮抗してしまいました(苦笑)が、本作について、「地球と地球人から離れる」すなわち「現実とのつながりを手放す」ことで、かえってある種の“リアリティー”を獲得した、といえる点、今のところの僕は高く評価しています。今年の冬(本作は昨年冬公開)には「ウルトラマンシリーズ生誕45周年」第2弾と銘打つ次作が公開されるという予告もありました。それはたぶん本作の続編的なもので、ゼロ、グレン、ナイト、ジャンの「ウルティメイトフォースゼロ」の活躍を十分展開させるのでしょう。しかし、その次、50周年?には、ぜひまた地球に「帰ってきた」ウルトラマンを手がけてほしいものです。異世界ファンタジーならウルトラでなくともできる。例えば、M78星雲系ウルトラマンの登場は思いきって見合わせ、「地球のウルトラマン」である平成の『ティガ』『ガイア』系のウルトラマンを総登場させるなどして、徹底して地球と地球人類の現実に関わる物語に、もう一度立ち返ってほしいと思います。