音楽の編み物

シューチョのブログ

言の葉と音の符、楽の譜は文の森 (33)

合唱コンクール関連の、これは再放送でしょうか、アンジェラ・アキ作曲の課題曲「手紙」を2人だけの女声の合唱部員で歌う、というのをやっていました。

編成を各団体が自らのお家事情に合わせてしまう、という、これも「アマチュア」的発想の典型です。そのこと自体はもちろんわるいことばかりではないと思います。ある意味フロイントでも日常的といえます。一方で編成も演奏も「立派な」「ちゃんとした」団体に優秀な賞与があり、他方でこのような「弱小」団体にも光を当てるという、みごとなダブルスタンダードであるところが問題なのです。が、今回はそういった総論的なことを展開したいのではありません。

コンクールといえば出番以外の出場団体がみんな客になるために必然的に大きなホールの開催となります。そういうステージで2人だけで歌うというのは、フェスティバルホールでリコーダーソロリサイタルをやるようなもので、ただでさえ“キャパ違い”なのです。だから、何か工夫をするとすれば、その“小ささ”を活かした表現を練り上げるとか、思い切ってPAを通すとか(笑)でしょう。

ところがこの2人、何と、途中で例の手拍子を始めたのです。そして、おわかりかと思いますが、それに合わせて会場全体が手拍子に包まれました。そして演奏後の2人のコメントが「みんな拍手(手拍子)をしてくれて嬉しかった」。

この何重にも誤解・転倒を含んだ状況に、しばらくあきれてものも言えませんでした。

彼女らはほんとうに、歌を聴いてほしかったのではなく、応援やノリがほしかったのでしょうか。あるいはここではもう、「ほんとうに」などという言葉がすでに“お呼びでない”のかもしれません。

偽りの音楽、音楽が無い音楽。嘘の教育、嘘で嘘を伝える教育。ここでは今一度、「美は教育はしません」というシモーヌ・ヴェイユの言葉をかみしめておきたいと思います。