音楽の編み物

シューチョのブログ

「トリカード・ムジーカ」名前の由来

 Trikado Muzika=トリカード・ムジーカ。原語はエスペラントで、日本語に訳すと「音楽の編み物」となります。

編み物をする手。それは、熟れた勢いと素早さを伴って、止まることなく自らの流れを保ちつつ、次々と複雑な形や模様を生み出していきます。その行為は、したことのない者からすれば驚異的な創造的伎倆でありながら、同時に、それをする当人にとってみればおそらく何でもない日常的所作に過ぎません。そのような両義性の中にある「手仕事」が、行為としての「編み物=Trikado」です。そしてその行為の産物としての「編み物=Trikoto」も、しない者からすれば、いかほどの辛抱や退屈を重ねた結果だろうかと途方に暮れる類いの労苦の結晶のように見えるも、編んだ当人からすれば、何ら大げさでない気持ちで、それでいてささやかながらも確かな喜びに満ちて、その小品を眺めるのでしょう。編み物を編む動作は類似的・反復的であり著しく制約的・束縛的であるかのようですが、そうであることによってかえって、手は大いなる自由を獲得し、初めの毛糸の玉一個からは一見とてもできあがりそうにないあの「編み物」を生み出すのです。

われわれにとって、音楽を演奏する行為、演奏表現を繰り出していく行為も、一面においてまさにこの「編み物」になぞらえることができましょう。それは確かに喜びを伴う創造です。が、どうということはないことでもあり、だからこそ貴いともいえるのです。

神が自然という音楽を演奏するのだとすれば、野に花を咲かせるというその演奏においても、一輪の花それ自体はけっして「大それたこと」ではないし、そうであるからこそその花は花一輪としての価値を確かに持つのです。