音楽の編み物

シューチョのブログ

クリ拾い (45)

 『地球ドラマチック』「ピダハン 謎の言語を操るアマゾンの民」の再放送を見ました。ピダハン語には,色の区別や,接続詞,そして何と,数詞もないそうです。その無神論的絶対平和的世界観は,ピダハンにキリスト教をもたらそうとした伝道師・エヴェレットの信仰を逆に揺さぶるほどのものだったということです。エヴェレット氏は言語学者でもあり,ピダハンの言語を習得するうち,彼らを愛し,彼らに愛されるようになったそうです。

 ──以下,この番組だけから受け取ったことではあり,それより深い詳細をもちろん知りませんが──,ピダハンの言語と文化を大事にしたいという考えにおいておそらく世界で最もピュアなエヴェレット氏が,(主流言語学者と対立したことが原因か)まさに「伝道的活動の疑い」を理由にされて政府から出入りを禁じられるとは,何とも転倒しています…。エヴェレットさんほど「大きな物語」ではありませんが,「小さな物語」としては類似の渦中に,しかし「私的」と片付けるほどは小さ過ぎない様々な問題を孕んだ事態に陥ったこともある者として,何ともいたたまれない気持ちになりました。世界中のどこにでもあるのだなあ,と,かってながらそういう感慨に至りました。

 漠然とした物言いで恐縮ながら,「世界は転倒に満ちている」というのが僕の最近の認識のまとめです。身辺の些事から世界情勢に至るまで,何かにつけ,そう要約できるような物事に溢れているといっていい,と考えます。あるいは,昔も今もなのでしょうか。むしろ,今さら言うなと言われるかもしれません。