音楽の編み物

シューチョのブログ

ひとりぼっちの宇宙人 (25)

第 II 章 ダン=セブンという多面体

2 セブンであることを知られるダン

  第9話「アンドロイド0指令」(2)

 ウルトラセブンが実はモロボシダンの変身した姿であること。これは他の登場人物たちの誰も知らない、重大な秘密である。この「変身(正体)の秘密」は、『ウルトラセブン』に限らず、ウルトラシリーズの旧来の常識・原則ではある(→注1)が、他でもない『セブン』のストーリー展開において、この秘密の重要性が際立っているといってよい。さらには、この秘密は、われわれ鑑賞者には明かされていること。これも当然のことではある。しかし『セブン』ではシリーズの他のどの作品よりも、この秘密(およびそれが鑑賞者には周知であること)の設定がよく意識されうまく扱われて作られているのがわかる。本挿話において、ダンが「ソガ隊員、すまん」(前掲DVD)と心の中でつぶやいてからソガに当て身をくらわせ気絶させてからセブンに変身するシーンなどは、その軽い例の一つであろう。また、第9話である本挿話において早くも、その秘密に迫るかのような台詞もみられる。物語の前半、キリヤマが「それに問題は、なぜモロボシダンを狙ったかだ」(前掲DVD)と一度疑問を投げかけるのだ。ダンにとっても鑑賞者にとっても一瞬の緊張が走る。そうなのだ。この秘密に焦点が当たることによって、鑑賞者であるわれわれは、自然に主人公のダンへと感情移入できてしまうのである。しかし、ここではこの疑問はそれきり最後まで話題にはならず、忘れ去られた。

 一方、敵である宇宙人たちは、「ダン=セブンの秘密」を知る者も数多い。チブル星人もダンが何者であるかを知っており、ダンがセブンに変身すれば自分たちに勝ち目がないこともわかっている。だからこそ、アンドロイド01にダンを襲わせたのである。余裕の態度でおもちゃによるダンとソガへの攻撃を見守っていたチブル星人だったが、ダンがセブンになった瞬間、急にあわてふためき、逃亡する。そのような彼らは所詮セブンの敵ではなく、ファイトらしいファイトはここでも見られなかったのであった。

注1:これをはっきりと打ち破って独自の世界を描こうとする意欲作が現在の『ウルトラマンメビウス』である(→注の注)。おそらく1年4クールの放送なのだろうが、第2クール後半において早くも、GUYSのサコミズ隊長が実は事の初めから「ミライ=メビウスの秘密」を知っていたという挿話(第22話「日々の未来」)があり、ほどなくしてGUYS隊員の一人であるリュウも「秘密」を知り(第29話「別れの日」)、さらに隊員全員が「秘密」を共有するに至る(第30話「約束の炎」)。以後、隊員はみなメビウスのことを「ミライ」「ミライくん」と呼び、「地球を守る仲間の物語」が続けられている。本稿でもやがて言及するセブンの最終挿話「史上最大の侵略」をバイブルとする筆者の世代からすれば、まさに隔世の感がある。が、『メビウス』がそのいわばタブーに挑み、かなりの程度成功していることは、率直に評価してよいとも思う。

注の注:『ウルトラマンティガ』においても、まずイルマとレナが「ダイゴがティガであること」を知り、最終回の1つ前の第51話において、GUTSやTPCの他の面々も、レナがティガに向かって「ダイゴ!」と叫ぶのを聞き、事の次第を知ることになる。しかし、この展開は、3話連続の最終挿話の中での出来事であり、むしろやはり『セブン』の形に近い。