音楽の編み物

シューチョのブログ

マァイケル・ヨンデル「ハードカバーと白熱電球」(11)

  チャールズ・テイラー

  『<ほんもの>という倫理 近代とその不安』

  (田中智彦訳、産業図書、2004年)

 

 3冊立て続けにサンデル関連の本について書いてきましたが、実は私がより関心を持っているのは、名前まであやかっているマイケル・サンデルよりも、その師の一人であるチャールズ・テイラーの方なのです。

 

────

カナダの思想家であるテイラーは、カナダのケベック州の分離自治問題に関心を持ち、コミュニティを重視する観点から、多文化主義の問題提起をしている。ヘーゲルについての大著もあり、人間が互いに承認するというヘーゲルの発想に沿って、対立するコミュニティ同士が相互に承認をすることによって共存を探っていくという「承認の政治」という考え方を提起して、多文化主義を基礎づけた。

────(小林正弥『サンデルの政治哲学』、平凡社新書、2010年、308頁)

 

この一節がきっかけでテイラーに興味を抱き、ちょうど翻訳されたばかりの『自我の源泉 近代的アイデンティティの形成』(下川潔・桜井徹・田中智彦訳、名古屋大学出版会、2010年)に手を出そうとしたのですが、本文が2段組み597頁、索引&注が89頁という大部さに怖じ気づき、未読のままです。そこへいくと本書『<ほんもの>という倫理』は、1段組み本文と注と索引を合わせて190頁。おぉ、これなら読めるぞ(笑)と。実際、ラジオ放送用の講義がもとになっているためもあるのか、文章も全体に平易で読みやすい。訳者あとがきには「テイラーの哲学・思想を知るには、まずは本書をお読み頂くのが何よりと思われる」(166頁)とあり、その通りだと思います。

 

(つづく)