音楽の編み物

シューチョのブログ

言の葉と音の符、楽の譜は文の森 (54)

 フリーアナウンサー朝岡聡さんがリコーダーを吹いているのをTVで見かけました(「爆報!THE フライデー」)。彼が無類のリコーダー好きで、それが高じてバロック音楽のコンサートを開いてなどもいることは以前から知っていましたが、今回は、番組のMCに田原俊彦さんがいることもあってのことでしょう、「ハッとして!Good」のサビを吹いていました。ほんの数十秒でしたが、いやいや、これがよかったのです。バッハやテレマンならまだしも、このような曲をリコーダーで、伴奏無し・和声無しで単音の旋律だけを吹いていくなんて、よくもまあと思いますが、それが彼の自信を表しているともとれます。「ハッとして グッときて」ではスタッカート、「(ハッ)と目覚める」でレガート、とタンギングを変えたり、「恋だから」の「ら」の跳躍・長音で目を見開いて思い切って歌ったり、明快なフレージングと表情を持ち、実に音楽的ですばらしかったと思います。顔の表情や上半身の所作も、確実に音楽家=音楽をわかっている人間のそれでした。「君と出会う…」以降も続けて聴きたかったですねえ。インタビューに答えていたその同じ普通のマイクに向かって、おそらくホールでもスタジオでもない何の残響設備もない所で、しかも数ある楽器の中でそういう環境によって最も不利に聞こえる(ソノリティーの小さい)リコーダーという楽器の演奏を披露するなんて、テレビ人としてのユーモアとサービス精神も兼ね備えている朝岡さんならではといえましょう。

 それにしても、このようにユーモア混じりに歌謡曲の旋律を無伴奏一声でリコーダーで吹奏するだけでも、そのハイセンスな音楽性がこぼれ出ざるを得ない、朝岡さんのような「ほんもの」の演奏家もいる一方、思えば、ホルスト組曲の第4曲の中から歌謡的主題をパクってきて3拍子から4拍子に間延びさせ、「クラッシックの名曲に歌詞を」とかいってフル伴奏で仰々しく歌うも、旋律造型が鈍いというか無いというか、大学の声楽科専攻などの経歴なんてその人の実際の音楽とはまるで関係がないのだという恰好の例、というような人もいるなあ、と。「にせもの」とは、さすがに言い過ぎなのでしょうか…。ともあれ、どちらも、テレビメディアの世界に(も)身をおく/おいていた点で同じでありながら、その違いがいくつもの意味であまりに対照的であったので、ふと連想してしまったのでした。