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クリ拾い (32)

 『岩波科学ライブラリー132 ブックガイド 文庫で読む科学』

    (岩波書店編集部編、2007年)

 

ブックガイドのレビューというのも…。ガイドにある本を読んでそれをレビューせえよ、と自己ツッコミしつつ。

 

9人の自然科学者がそれぞれ、文庫で読める主に自然科学系の本を紹介しています。特に藤永茂氏の推す『新しい科学的精神』(ガストン・バシュラール/関根克彦訳、ちくま学芸文庫、2002年)はおもしろそうです。

 

トーマス・クーン『科学革命の構造』は有名ですが、藤波氏によると、そこでクーンは「ニュートン力学アインシュタインの力学は全く相容れない二つのパラダイムである。アインシュタインの相対論的力学はニュートン力学を含むということはあり得ない」と言っているそうです。は?そんなアホな。

 

バシュラールは「アインシュタインの相対論的力学はニュートン力学を訂正すると同時にそれを包含する」と言っているとのこと。ホーホー、そうでしょ。この辺りのことを以前、物理学者の父に僕も改めて質問したことがありますが、バシュラールとほぼ同じ表現で言っていました。

 

それにしてもクーンの同書は文科系の必須文献ではないの。エエカゲンなもんですなあ。以前ここで同様の話題(ソーカル、ブリクモンの共著『知の欺瞞』について)を採り上げたときは僕は、クーンのことはあまり知らないまま「まあこれだけそこかしこで“パラダイム論”が言われるのだから、まともな部類なのだろう」という根拠のない憶測のまま、控えめに、むしろ肯定的に引き合いに出し、

 

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有名なクーン『科学革命の構造』を最も「過激に解釈」すると極端な相対主義に向かう、と本書も指摘しています。「ニュートン力学相対性理論によって否定された」などという通俗的短絡的誤解が生まれる素地ですね。

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と書いたのですが、まさか、その「通俗的短絡的誤解」をクーン自身がしているとすれば…、いやはや。

 

──という僕自身、未読のまま憶測で何か書いたり孫引きだけでエエカゲンなことを言ったりしていてはいけませんで(頭掻)、両書とも自分で読んで確かめるべきですがね…。ともかく、バシュラールはぜひ読もうと思っています。