音楽の編み物

シューチョのブログ

クリ拾い (31) ──映画『トイレット』──

──ネタバレ注意…と一応お断りするものの、すでに方々で書かれているネタのようです。──

 モーリーの台詞「欲求に理由を求めるのは無意味だ」が心に残りました。ピアノを弾くキャラクターである彼の言葉として示されたことにも意味がありますね。欲望と欲求は違うのであり、「ギョーザが食べたい」のと同様、芸術は欲望ではなく欲求と関わります。ここのところの誤謬・誤解がすっかり蔓延しているのではないでしょうか。登場人物の少ない本映画において、モーリーの存在は特にキーとなっていると僕には思えます。彼ほどの豊かな人間が「役立たず」という自己卑下と悲観のもとにいる…、世界の何という転倒であろうか、と痛切に感じずにおれません。芸術こそが人間の根本である、と改めて。

 他に、「ワルトシュタイン」第1楽章のロックヴァージョンでエアギターを弾くシーンは笑えました。これがエンディングでも流れるのですが、途中ですっと原曲に移り変わるところなど、なかなかハイセンス。エレキぎんぎんのままでは、そりゃ終われませんよね(笑)。