音楽の編み物

シューチョのブログ

クリ拾い (5)

 テレビ大阪深夜の「歌ドキッ!」という番組で、「私は泣いています」をアヤカというタレント(歌手?)が歌っていたのですが、まことに軽薄短小に聞こえました。骨抜きというのはこういうののことを言うのだろうと思ってしまいます。

 この歌は、詞も曲もりりィのハスキーな歌声も、あるいはそれらが一体となって、当時小学生だった僕にさえ、某か、理解する/しない以前、好き嫌い以前のインパクトを与えたものでした。

 当時と同じようにやれというのではありません。むしろ僕のような者から見れば、ポップス界は歌と歌手が結びつき過ぎであり、作品と演奏が分離され異演されることは歓迎のはずなのです。ところが、こういうリメイクやカバーの企画というのは、どういうわけか、曲をスポイルする方向にばかり舵をきっているように思えます。「ちょっと昔の歌、歌ってみました」「オシャレでしょ」という域を出ない。また、そこにニーズがある。というのはおそらく違って、ニーズを作る。するとほんとに一定のニーズができてしまうから、作った方もいい気になる。「今は時代が違う」というのならば、初めから昔の歌など持ち出さなければよいのに。昔流行った曲を、ちょっと今風に「アレンジ」して、若いタレントに今風に歌わせ、お手軽に仕上げる。やはり爛熟というより枯渇というべきではないでしょうか。

 「カラヤンアダージョ」と同様で、そこから「りりィっていう人の昔のやつも聴いてみよう」となればまだ幸いなのでしょうが。

 ただ、僕は「歌ドキッ!」を今回たまたま初めて視た旨、申し添えておきます。いきなり総論的にこの番組のすべてが×と言いたいのではありませんし、言える立場にありません。まずはあくまで各回の是々非々であるべきですね。