音楽の編み物

シューチョのブログ

ひとりぼっちの宇宙人 (30)

第 VI 章 ダン=セブンという多面体 (3)

1 悲劇のエトランゼ

  第26話「超兵器R1号」(3)

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マエノ「信じられません。ギエロン星は、温度270度、酸素0.6%、金星とよく似た燃えない焦熱地獄です。そんな所に生物が棲めるはずがありません」

タケナカ「しかしそこに生物がいた。しかも、超兵器R1号の爆発のショックで、変異したんだ」

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ギエロン星を実験場所に選んだことを悔いるマエノ。しかし、ホーク3号(→注1)に積んだ新型ミサイルの投下によってあっさり粉砕される星獣。

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フルハシ「隊長、あっけない最期でした」

キリヤマ「うん。…しかし、おかしいな、どうも」

ダン「ええ、超兵器R1号の爆発でも死ななかったやつです」

ソガ「宇宙を飛行して来て、エネルギーを使い果たしたのかもしれません」

アマギ「そうですよ、きっと」

タケナカ「うん…、隊長、被害を最小限度にくい止めることができて、何よりだった」

セガワ「いやあ、これからもどんな侵略者が来るかもわからん。一日も早くR2号を完成させなきゃ。いや、理論的にはさらに強力な超兵器、R3号、R4号の製造も可能だ。タケナカさん、こうはしておられんよ…」

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 再び曇るダンの顔。キリヤマの不安の通り、飛び散った星獣の細胞は恐るべき生命力を持ち、磁石に吸い寄せられるように1カ所に集まり、元の身体に再生する。月夜の墓地に再び吠える星獣。

 上記セガワの台詞は、星獣が一度死に至ってこそ引き出される。みごとなストーリー展開である。夜が明け、星獣が降り立ったのは、明るく晴れ渡る空の下、黄や赤の花および緑の草木に恵まれ、小川も流れる、東京近郊の美しい野原である。すぐ後で述べるが、夜が明けたことは重要である。

 針が振り切るホーク1号のガイガーカウンター

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キリヤマ「放射能だ」

ダン「ええ。ギエロン星を爆破した、R1号の放射能です」

キリヤマ「たいへんなことになるぞ、今に…」

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放射能で東京が危険」とのホーク1号の報告を受け、青ざめる参謀たち。セガワはこの危機を救うのは超兵器R2号だけだと発言、それでさらに巨大な生物に変異したらどうするとマエノが詰め寄るが、セガワは、このままでもどうせ東京は危険なんだからR2号の破壊力に賭けたいという。“破れかぶれ”とはこのことだ。

 ホーク1号は星獣に応戦するが、歯が立たず、星獣が両手を前に差し出し放つリング状光線に打たれ、あっけなく不時着。星獣の吐く黄色い霧の中、ダンは変身する。ギエロン星獣の鋭利なナイフのような両腕が、日光を反射し、鈍い音を伴う電撃のような効果を生み出し、セブンの目を眩ます。セブン、宙返りしてアイスラッガーを投げるも、星獣の腕や頭は想像以上に硬く、4度ともはじき返される。星獣は再びリング状光線を放つ。光線の速度がたいへん速いため、セブンはよけることができず左腕に命中する。今まで一度も発したことのないような大きな呻き声をあげて苦しむセブン。隙間無く言葉を埋めて訴えかけた前半とは対照的に、今度はずっと台詞の無い映像描写によって、ギエロン星獣の「悲しい」怒りに満ちた強暴さが表現されていく。

 言葉が通じないことはもとより、兵器を繰り出す知的生命体とは異なり、この棲星怪獣とはリアルファイトの格闘で決着をつける以外に方法はない。まして「超兵器R1号の爆発でも死ななかった」相手である。セブンは星獣を倒せるのか。どうやって。

 進退窮まるはずのこの局面、突如としてあのいつもの明るいBGM(=主題歌の行進曲風アレンジ)が入り、セブンはその銀の胸板に太陽エネルギーを吸収、筋肉隆盛・腕力増強となる。この急展開、唐突だとばかりも言えない。《先週の》「零下140度の対決」では、エネルギーを消耗したセブンが太陽の近くまで飛ぶシーンによって、セブンの力の源が太陽エネルギーであることが表現された。それを布石にする形で、《今週》は、まさに快晴の空の下、セブンが精神統一をはかり太陽光を集めてパワーアップするシーン。それが、何ら説明的なナレーションも台詞もなく映像だけで表現されても、《毎週見ている》鑑賞者のわれわれを納得させるには十分なのだ。「太陽エネルギー」というフィクションが、挿話を跨いで生かされたのである。また、星獣がウルトラ警備隊に一度爆破され復活したのは月夜である一方、セブンと星獣との格闘は昼である、という対比もある。

注1:アマギは「ホーク2号」と言っているが、“実際には”ホーク3号。