音楽の編み物

シューチョのブログ

追悼・渡辺宙明 (1)

ご長寿で、現役でご活躍だっただけに喪失感が大きいですね…。
ご冥福をお祈り申し上げます。

 

残された膨大なお仕事…熱い主題歌/音楽の数々に思いを馳せつつ、そのいくつかについて、書いておきたいと思います。

 

まずは自分の素の思い出から2曲。
何と言っても

 

ハカイダーの歌

 

を第一に挙げたいです。
イントロから、強奏トロンボーンの裏で不気味な電子音がユニゾンでなぞる名旋律、主音─属音だけでなく属音の半音上も叩くティンパニ木管の細かな合いの手、トランペットの上昇…と、圧倒的なハイテンション。そこへ水木アニキのドスの効いた歌声…。低い歌い出しでアニキが気合いのため少し上ずるのにもゾクゾクします。このクォリティーで、主題歌でもエンディングでもなく一挿入歌とは…。本放映時小学2、3年生だった僕の耳にこの曲の端々が焼き付き、中学生になって再放送された時には、「またハカイダーの歌が聴ける!」と嬉々とし、ハカイダー登場編以後この曲が流れるのをいつも楽しみに待ったものです。TVの前にカセットテープレコーダーを置いて“生録”もしました??。特撮史上最強最高の魅力を放つ悪の戦士ハカイダーを歌う曲として、どこもかしこも「こうしかない」という驚きの完成度。宙明先生が、ハカイダーは『人造人間キカイダー』の物語にとって特別な存在であるということを十分に理解して作られたのだろう…と確信的に想像します。逆にまた、この曲あってこそハカイダーの存在の意味が定まり深まり、その価値が揺るぎないものになった…ともいえます。

次いでは

 

キカイダー01

 

日本歌謡随一の名歌手・子門真人のベストナンバーの一つでもあります。
30年ほども前になりますが、2曲のメドレーを吹奏楽に編曲して演奏してもらったこともあります。「ハカイダーの歌」は、聴きたかったので、あえてCl.をTacetにしました(笑)。キカイダー01へのブリッジ・パッセージは我ながら上出来?。指揮者畏友Sの採った速いテンポに胸踊り…、編曲はともかく演奏はオリジナルを凌駕する勢いがありました。

もう一つ、

 

オー!! 大鉄人ワンセブン

 

も、番組視聴当時から今日に至るまでずっとメロディーを空で歌えてきた1曲です。「(ストーリーは忘れても)歌は残る」の典型です。ただ、作曲が宙明先生だとは、最近になって改めて資料に当たるまでは思いもよらず、え!これが渡辺宙明?とその意外さに驚いたものです。いつも?の曲調とは明らかに違う、それだけに、いい意味で普通の、普遍的ともいえる旋律造型を獲得している…。途中、伴奏に007のテーマと同じ和声進行が差し挟まれ、「7」つながりで発想されたのかな、とも想像できて何だか楽しいですね。

 

自分の子ども現役時の視聴・記憶ではなくずっと後になって知ったものの中で最も目を見張ったのはやはり

 

みなしごハッチ

 

ですね。テンポを遅くした分、そこに16ビートを詰め込んだ、複雑な構成による凝った作り込み。演奏も歌唱もかなり高難度と思われます。前奏の前奏は『人造人間キカイダー』のダーク破壊部隊ロボット登場シーンの音楽に酷似していて、あのハッチの顔はまず浮かばない(笑)。知名度が低いとすれば、それは全体を覆うとっつきにくさ・難しさのためでしょうか…。だからこそ、今、番組の懐かしさなどは置いて、純粋に曲自体を音楽として味わうレパートリーにふさわしいと思います。

 

戦えイナズマン
勝利だ! アクマイザー3

 

は、サビのヒーロー名呼称の旋律が印象的な2曲。
「戦え我らのイナズマンイナズマンイナズマン!」の箇所(の特に1つめの読点まで)に当てられた音符は、単純なのにどこか非凡で、一度聴くとそのあと何度かスルメを噛むように口ずさんで味わいたくなる一節です。

 

「アクマイザー、アクマイザー、アクマイザー、3!」の「ザー」の最初の2つの1小節半=6拍におよぶ長い伸びに、この3人の“存在の悲しさ”が表現されている、といえばいささか大げさに過ぎましょうか…。

 

子ども現役当時、『イナズマン』は未視聴、『アクマイザー3』は視聴していたことは覚えているも『大鉄人17』と違い主題歌は忘却(頭掻)…。今これらを愛でるのがノスタルジーからだけではないことの証ともいえます。