音楽の編み物

シューチョのブログ

ベートーヴェンの小交響曲は、小さな大交響曲であり、思索する情熱である。

音楽テーゼ集
 
(8) ベートーヴェンの小交響曲は、小さな大交響曲であり、思索する情熱である。
 
 
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  ベートーヴェン交響曲第8番へ長調

 第7と第8の2つの交響曲はほぼ並行して作曲され、作曲者自身は第8の方が気に入っていたと伝えられる。“リズムの神化”“舞踏の聖化”と称されその魅力を象徴的に特化説明できる第7に対し、第8はいわば“歌あり踊りあり物語ありユーモアあり”の多彩な魅力を持つ。特に第1楽章は、まるでよくできた短編映画や紙芝居のように、てきぱきとした場面転換を伴って充実した音楽が繰り広げられる。短く速い第2楽章は、楽しく軽く少し謎めき、この曲が“小交響曲”と慕われる一番の理由であろう。つづく第3楽章には通常の速いスケルツォではなくのびやかなメヌエットが置かれ、典雅な装いでしっかりと腰を下ろしている。第4楽章では、走馬灯のような短い展開部と、楽章全体の何と約半分を占める長大なコーダ(終結部)とが呼応し、ベートーヴェンの“思索する情熱”が見事に音と響きに具現化されていく。最後は主和音属和音の連続強奏が、小振りで中身の詰まったこの交響曲を自らにふさわしくしめくくる。
 
(2003年)