音楽の編み物

シューチョのブログ

わかる人、わかる時、わかる可能性 (30)

アメトーーク」の「勉強大好き芸人」のコーナーを少し見ました。笑い飯・哲夫が「最澄空海」と「天台宗真言宗」の対応の憶え方として、

頭文字の五十音の行に注目し、サ行同士の最澄真言宗でペアかと思いきやそうではないから、これを「逆」とだけ憶える

という方法を紹介していました。さすが、哲夫。優れた“メモリ節約法”です。「最澄空海」の二人と「天台宗真言宗」の二つをそれぞれセットで憶えることはすぐにできます。つまり、それら4つの名前だけなら簡単で、例えば「空海とならび称されるのは、誰だっけ」とは、まずならないでしょう。問題はそれらの対応です。たった二組のことなのに、あるいはそれゆえに、頭に入りにくいのです。そういうところをみごとに突いたセンスのよさ。それに、何より、おもしろい。ところが、直後にオリエンタルラジオ・中田がしゃしゃり出て

「真─空、天─才(最)」の方が憶えやすいだろ?

と、得意げに言って返しました。こちらは、別におもしろく(も何とも)ない、ただマジでガチの「なるほど、ウマイ」というだけの、ということは、100人が100人納得しない人はいない、つまり、凡庸ということです。哲夫は

「しん」「くう」「てん」「さい」と4つおぼえるよりも、「逆」なら、1個だけでいい

と反論しかけたのですが、周囲からもブーイングで遮られてしまいました。平均的には「さすが中田」で締め、ということなのでしょうね。「真空、天才」は誰でも思いつきやすそうです。一方、「逆」(笑)は、「おや?」「あれ?」「えーぇ、それはちょっと…(違うんじゃないか)」と一瞬返したくなる。どちらが「この機会にあえて耳を傾ける」べきネタでしょうか。答えは明らかですよね。それなのに「うん、うん」とすぐわかってしまう方をよしとして済ますとすれば、こんなにツマランことはありません…。もちろん、周囲の芸人たちや観客や視聴者の多くもほんとうのところは、案外「哲夫、すごい/おもしろい」と思ったのかもしれず、ここにこうして書くなんて野暮、ということかも。むしろそうであってほしいところです。

さて、もともと哲夫贔屓の僕ですが、今回特に響いたのは、哲夫の記憶法と、僕自身が高3のときに編み出した、「商の導関数」の公式についての

「母2乗、分の、母マイナス母ダッシュ」とだけ唱えつつ、計算していく

という方法とに、共通性をみたからです。暗唱語句の長さそのものを節約する、という類似点があります。わかる人にはわかると思いますが(笑)、導関数の分子の、前の項は、元の分子を微分したものに元の分母を微分せずにかけ、後ろの項は、元分子は微分せずに元分母の方を微分してかけるのですから、元の分母をどうするか(どちらが前か)だけの情報が確かならば、もう間違えないわけです。もちろん「子ダッシュマイナス子」でも理屈は同じですが、「母2乗分の」と始めていますし「母」で統一した方が語呂がよい。

もう一つ、対数の「底の変換公式」も、変換後の底は自分が変換したい新しい底とするのに決まっていますから、唱える必要はなく、新しい真数についてだけ

元の底、分の、元の真数

と、あるいはさらに簡略化して

底、分の、真数

とだけ唱えれば、間違えない。

ただ、白状しておくと、現在の僕は「今でもいつも当時の自分の方法で唱えている」というわけではありませんがね。