音楽の編み物

シューチョのブログ

言の葉と音の符、楽の譜は文の森 (39)

N響アワー上岡敏之の第九第2楽章。おや、いいですねえ。生放送当時は期待はずれと思ったのですが…。こういった、楽譜上は in one の曲に対して造型意識を可視化した指揮を行うことには共感します。しかも、ベートーヴェンが「3拍子にとること」などと記していない箇所の、例えば(第)77(小節)から92までの部分を、ユニークな、“前後左右の4拍子”とでも言えるオリジナルの8拍子図形で振り進めていました。小林先生はセミナーで、確か運命の第1楽章について「指揮者はつねに(4小節で1フレーズなどの)フレーズの意識を持っておく必要がある」としつつも「しかしそれは意識の中だけに留め、指揮自体はあくまでタテにはっきり振っていかないとダメだ」と付言していた記憶があります。僕はそれを聞いてにわかには首肯し難かったのですが、上岡の指揮を見て溜飲の下がる思いです。77〜92と類似のフレーズが何度か出て来るうちの1回、オーケストラが乱れかけた場面もありました。そういう現象は、僕にとっては、大事にすべきことの実践例としての信頼が増しこそすれ、減ることはありません。

ところで、マリナーのブラームス第4も以前聴いた印象よりはかなりよく聴こえました。…うん、待てよ、ひょっとすると音をリフレッシュさせているのか、という疑いも。まあ、程度問題ながらも、よくなることはいいことだとひとまず言っておきます。