音楽の編み物

シューチョのブログ

クリ拾い (25)

 瀬戸一夫『科学的思考とは何だろうか』(ちくま新書、2004年)

 

 「相対性理論を数式無しで説明する」という試みは、他にも多く行われているのでしょうか。僕は本書で初めてお目にかかりました。一読、なるほど丁寧とは思いましたが、やはり数式を用いた方がシンプルでかえってわかりやすいと感じてしまうのは、僕が曲がりなりにも「理系」だからでしょうか。「相対論の解説のなかには、数式を使うほうが、かえって理解の混乱を避けられるといった方針のものもある。しかし、それは相対論の考え方を説明しているのではなく、説明する代わりに数式で処理しているだけである」との著者の言葉にはギクリとするのですが、しかし、数式を用いた解説の場合、本書ならば数式無しで説明されるその内容を、用いられている当の数式それ自体/その行間/その奥に見てとれてこそ、解説する側にも読む側にも意義があるというものではないでしょうか。けっきょく、数式を用いようと用いるまいと、「よい解説」と「まずい解説」があるだけ、と思います。

 

 僕はずっと、数学や物理学に関する「縦書き」の本は、それだけで信用ならず、手に取る気にならない(笑)という感触で来ました。数式無しでどうやって数学や物理を語るのか…と疑ってしまうような所があります。言語、特に日本語というものを深く論じようとする立場になるとこの辺りは微妙な問題を含むのでしょうが…。